整体修行の肝要/ブルースリーの言葉を借りて

社会について

我々の世代で、ブルース・リーのことを知らない者は、いないだろう。
稀代の名優であり、天才的武術家でもある。

その彼が、次のような言葉を遺しているそうだ。

「私が恐れるのは、1万通りの蹴りを1度ずつ練習した者ではない。たった1つの蹴りを1万回練習した者だ」

厳しい武術修行や格闘経験から紡ぎだした、彼ならではの箴言だと思う。
そして、整体も、まったく同じだと私は思うのだ。

私が現在、整体の現場で使っている手技。
それは、基本的には、2008年1月、サラリーマンだった時代に初めて習った手技である。

当時は、それは「標準アプローチ法(通称:APP法)」と呼ばれていた。

施術時間は、約10分。
力を使わず、そっと触れたり、軽く撫でたり、やさしく揺らすだけ。
受けた者は、何をされたかわからない。
それでも、ありとあらゆる症状に劇的な効果をもたらす。
初心者でさえ、プロを超える結果が出せる。

非常に卓越した手技であり、約10年前は、これを習得するだけで200万円が必要だった。
それでも多くの者が、習得のために殺到した。

私の師匠(故人)は、「こんないいもの、他には絶対ないよ!」と言っていた。
そんな珠玉の手技を、私は守っていきたいと思った。
出来得れば、私の手でさらに進化、深化させ、次世代の者へ伝えたいと思った。

そんなAPP法だが、共に学んだ者の何人かは、次のように言った。

「まだAPP使ってんの?それじゃ、治せないでしょ」
「そんな時代遅れの技、教えちゃだめだよ」

アドバイスは、ありがたく拝聴した。
しかし、私の気持ちは揺らぐことはなかった。

私とて、いろんなセミナーに参加したり、教材を買って、他の手技を勉強した。
その投資額は、半端ではない。
でも、どんな手技を学ぼうと、結局はAPP法へ戻ってくる。
逆に、APP法を進化、深化させるために、学び続けていると言っても過言ではない。

現在は、APP法ではなく、「基幹操法」と呼んでいる。
APP法は、私が整体を学んだ学校の登録商標と聞いているからである。
しかし、違う名称を付けた真の理由は、そこにはない。
私なりの解釈や表現が加わり、実際にはAPP法とは似て非なるものになっているからだ。

しかし、最高の学びの場は、何といっても整体の現場である。
この仕事を始めてから、1万人を超える人たちに施術をさせていただいた。
劇的によい結果が出たことも多々あるし、何も変化せず悔しい思いとしたこともある。
そのいずれもから、多くの気付きと学びを得た。
そして、改良に改良を加えて来た。

その他、強いインスピレーションを受けるのは、武術稽古である。
大東流合氣柔術と柳生新陰流兵法。
その稽古が、理合いの発見と、手技練磨のための非常に大きな糧となっている。

さて、たくさんの技術を習得したこと。
それを「売り」にする整体師も多いだろう。

しかし、私は違う。
たったひとつの技術を、どこまでも深く掘り下げる。
ただ触れる、そのことに無限の可能性を見出し、精度を高めていく。
そんなやり方が、性に合っている。

だから、冒頭にあげたブルース・リーの言葉が、深く心に刺さった。
愚直に場数を踏み、そこで得た気付き、学びを、私はこれからも武器にする。

いつも、門下生諸君には、次のように伝える。

この世界には、たくさんの手技や流派がある。
どれも、素晴らしいものばかりである。
だから、目移りしがちである。
特に初心者であったり、結果が出せない時は、他を学びたくなる。

気持ちはわかる、でも、耐えて欲しい。
まずは1万回、練習を積んで欲しい。
そうしないと気付けないこと、学べないことがある。
自分だけの気付き、学びが、自分しかできない施術として実を結ぶのだ。

整体の修業とは、生き方の修業そのものである。

本投稿の最後に、「小さな人生論」から抜き出した一節をあげておく。
修業の心得として、味わってみて欲しい。

「およそ事にあたりて苦しく思ふは下手の証拠なり。度重なる毎に苦次第にぬけさり、面白味忽然と湧かむ、是上手になりし証拠なり。故に苦、いよいよ激しくなる時は大願成就、時節到来の数分前なる事を知り、大死一番勇を鼓して進め。苦とは何ぞ、来れ汝に告げむ。苦とは外にあらずして内にあり。自ら苦しと思うが苦なり。面白味でてこそものも上手なれ 働いてみよ苦にならぬまで」

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