ぎっくり腰でお困りのあなたへ


朝、起きようとしたら腰に激痛が起こり、立つことはもちろん、動くことすらできなくなってしまった・・・このように、突然やってくる急性腰痛を「ぎっくり腰」と呼んでいます。ぎっくり腰には、原因があります。それを知ることが、正しい対処や予防の第一歩です。

ぎっくり腰

ぎっくり腰とは

ぎっくり腰とは、特別な予兆がなく発症する、比較的激しい急性腰痛のことです。
医学的な診断名ではなく、あくまでも一般名称です。
ぎっくり腰といっても、軽いものから重いものまで、症状も状態もさまざまです。
重症の場合、立てない、動けない状態になることも少なくありません。
原因と正しい対処法を知らないと、症状を長引かせたり、何度も再発させたりすることがあります。

ぎっくり腰が起こるきっかけ

ある日、突然襲ってくるぎっくり腰
激痛にも関わらず原因不明なため、西欧では「魔女の一刺し」と呼ぶそうです。
ぎっくり腰は、一例として下記のようなきっかけで起こります。

  • 朝、布団から起き上がろうとした
  • 顔を洗おうと腰を曲げた
  • 大きなくしゃみや咳をした
  • 椅子から立ち上がった
  • 休憩するために、身体(上体)を伸ばした
  • 車の後部座席の荷物を取ろうと、身体を捻った
  • 車から降りようとした
  • 電車の網棚に荷物をあげた
  • 荷物を持ち上げようとした

いずれも、何気ない日常の動作です。
特に、腰に大きな負担をかけたわけではありません。
いったい、何が起こっているのでしょうか?
また、なぜ耐えられないほどの激しい痛みが襲うのでしょうか?

ぎっくり腰で起こっている状態

ぎっくり腰とは、いったい何が起きているのでしょうか。
なぜ、激しく痛んだり、立てなくなったりするのでしょうか。
大きくは、次の三つが考えられます。

  1. 仙腸関節の変位
  2. 腰椎の変位
  3. 筋肉や筋膜の損傷

以下、順に見て参りましょう。

1.仙腸関節の変位

仙腸関節とは、骨盤のうち、仙骨と腸骨が接する部分を指します(下図参照)。
上半身と下半身を繋ぎ、上半身の体重を支え、地表からの応力を受け止める、たいへん重要な関節です。
これが変位する(ずれる)ことにより、激しい痛みを生じたり、立てない、歩けないなどの運動制限がかかります。
痛みは、一般的に腰と言われる場所より、お尻に近いところに生じます。
骨盤の上にある筋肉 (脊柱起立筋、腰方形筋など)を緊張させて痛みを生じさせたり、太もも後ろ側やふくらはぎに痛みやしびれを生じさせることもあります。

仙腸関節

2.腰椎の変位

腰椎とは、脊柱(背骨)の最下部にある5つの骨のことです。
これが変位(ずれ)を起こすことにより、腰の中心部や背骨の両脇等が痛みます。
上半身の前屈、後屈、回旋の各運動で痛みが生じることも多いです。
原因は、脊柱起立筋や腰方形筋のアンバランスです。

腰椎

3.筋肉や筋膜の損傷

上記1、2により、筋肉のアンバランスが生じ、それが原因となり筋肉や筋膜が損傷し、それが痛みとなって顕れます。
この痛みは、静止時にも感じます。
また、筋肉バランスが回復してもしばらく残ることがほとんどです。

ぎっくり腰が起こる仕組み

ぎっくり腰は、ある日、突然に起こります。
急性腰痛とされますが、その背景には慢性腰痛や慢性疲労があります。
具体的には、次のような過程を経て、ぎっくり腰は起こります。

  1. 腰周りの筋肉の過疲労、過緊張
  2. 筋肉の緊急停止命令の発動
  3. 筋肉バランスの乱れ
  4. 骨格の変位(仙腸関節や腰椎の変位)

1.腰周りの筋肉の過疲労、過緊張

腰は、上半身と下半身をつなぎ、上半身の体重を支え、地面からの応力を受け止める、身体の要ともいえる部位です。
さまざまな筋肉群や内臓が協力して腰を支え、少々のことでは故障しません。
しかし、それが仇となります。
つまり、特定の筋肉に疲労が蓄積していても、他の筋肉がカバーをするため、疲労が自覚しにくいのです。
また、疲労をしていても、大半の人はやり過ごします。
そうやって、腰周りの筋肉に、どんどん過疲労、過緊張が蓄積します。
疲労原因の大半は、悪い姿勢や動作習慣です。

2.筋肉の緊急停止命令の発動

疲労が限界に達すると、身体は警戒態勢に入ります。
そして、腰に僅かでも負担がかかると、特定の筋肉に緊急停止命令を発動します。
これ以上動かすと危険だと判断するためです。

<補足>筋肉は脳の命令で動く

一般的にはあまり知られていませんが、筋肉は脳の命令(神経伝達)で動きます。
その仕組みを説明するため、便宜的に「心の脳」と「身体の脳」に分けます。
たとえば、歩くという動作をする場合、まず心の脳で「歩こう」と意図します。
その意図は身体の脳に伝えられ、身体の脳は各筋肉に命令を送ります。
歩くという動作は、約200個の筋肉が同時に動くと言われていますが、それらすべてに同時に命令を送るのです。
身体の脳は、命令を送ると同時に、筋肉が今どのような状態にあるのか、常に情報を受け取っています。
歩くという何気ない動作でも、奇跡的な情報処理のもと、実現しているのです。
身体の仕組みって、本当にすごいですね。

3.筋肉バランスの乱れ

骨格は、複数の筋肉がバランスをとって保たれます。
また人体の動作は、複数の筋肉が協調作動して実現します。
特定の筋肉に緊急停止命令が発動された結果、筋肉のバランスや協調が乱れます。
全身の筋肉は常に連鎖、協調して働きますので、乱れは全身に及びます。

4.骨格の変位(仙腸関節や腰椎の変位)

動作の途中で特定の筋肉に緊急停止命令が発動された場合、その筋肉が付着した骨が変則的な動きを余儀なくされ、骨格に変位が生じる場合があります。
主として、上記にあげた仙腸関節や腰椎の変位です。
その結果、変位を起こした関節が動くたびに痛みを生じます。
変位が原因となって、激しい身体の歪みを生じたり、立てないということもあります。

ぎっくり腰になったら・・・

もしぎっくり腰になったら、その直後の対処が、たいへん重要です。
ここを誤ると、確実に症状を長引かせます。
よほど酷い症状の場合以外は、家庭で治癒できます。
以下、経験に基づく方法をお伝えいたします。
参考にしてください。
ただし、実践にあたっては、各人の責任においてお願いいたします。
わからないことがあれば、お気軽にお問い合わせください。

早く治癒させるための三原則

ぎっくり腰に限りませんが、痛みや症状を早く治癒させる三原則をご紹介します。
原則、これを守ってください。

  1. 痛いことをしない、無理なことをしない
  2. 痛い姿勢、体勢をとらない
  3. できることをする、動かせるところを動かす

安静にする

痛みが出た直後は、痛みが出ない体勢を取り、安静にするのが無難です。
無理に動くと、症状を悪化させることが多いです。
緊急停止命令を無視すると、身体は可動領域をさらに狭めようとするからです。
ストレッチをしたり、患部を揉みほぐすのは厳禁です。
強い刺激により、身体はますます警戒態勢を強め、症状が悪化します。
安静にするなら、側臥位(横向きに寝ること)が楽なことが多いようです。
痛みが激しい場合は、患部に湿布薬を貼ったり、氷嚢を当てるのもよいでしょう。
ただしいずれも消炎鎮痛が目的であり、治癒させるものではありません。

手当てをする

文字通り、痛い場所やその周辺に、そっと手を当てます。
接触圧は、可能な限り弱くしてください。
肌や服に触れるか触れないか程度の圧が、望ましいです。
目的は、筋肉の緊急停止命令を解除することです。
ただし、難しい場合は、避けてください。

少しずつ動く

急性期の痛みが緩和した後は、安静にするより、動いた方が早く治癒します。
それは、以下の理由からです。

  • 筋肉を動作させて血流を上げ、治癒を早める
  • 痛くない範囲で動くことにより、筋肉の緊急停止命令を徐々に解除する

以下、動き方の目安を示します。

1.安静にしながら、動かせるところを動かす

痛くない安静な体勢のまま、動かせるところを動かします。
たとえば、次のような動作です。

  • 足首や手首を振る
  • 膝を上下、左右に動かす
  • 身体を軽く揺する

焦らず、時間をかけ、ゆっくりやってください。
三原則を守り、痛いことは絶対にしないでください。

2.「四つん這い」になる

ある程度動けるようになったら、「四つん這い」になります。
四つん這いとは、ゆわゆる赤ちゃんがハイハイする時の体勢です。
ポイントは、以下の通りです。

  • 両手、両膝を地面につく
  • 両手、両膝の間隔は、肩幅くらいにする
  • 足のつま先は、立てる
  • 膝は直角より、やや曲げる
  • 胴体の力を抜き、自然に腰が反るようにする

いずれも、できる範囲で結構です。
四つん這いの姿勢のまま、1~数分間、静止します。
その際、ゆっくり呼吸するようにしてください。
呼吸をしながら、身体の動きに意識を向けると、よりよいでしょう。

3.「四つん這い」のまま、胴体を前後に動かす

2.でお伝えした体勢で、手と膝を地面につけたまま、胴体を前後に動かします。
痛くない範囲で、ゆっくり動かします。
無理に身体を伸ばしたり、腰を引いたりしてはなりません。
ラクに呼吸をしながら、動作してください。
その際に、身体の動きに意識を向けると、よりよいでしょう。

4.「四つん這い」のまま、腰(お尻)を左右に振る

2.でお伝えした体勢で、手と膝を地面につけたまま、腰を左右に動かします。
お尻を振るような感じです。
これも、痛くない範囲で、ゆっくり動かします。
ラクに呼吸をしながら、動作してください。
やはり、その際に、身体の動きに意識を向けると、よりよいでしょう。

5.「四つん這い」のまま、歩く

2.でお伝えした体勢で、歩きます。
いわゆる赤ちゃんのハイハイ歩きと同じです。
前へ行ったり、後ろへ行ったり、横へ行ったり、歩き回ったり・・・
痛くない範囲で、いろんな歩き方をするとよいでしょう。
当面、トイレなどへの移動も、この体勢が無難だと思います。

6.ゆっくりと立ち上がる

5.が苦労なくできるようになると、立ち上がってみましょう。
四つん這いの体勢から跪座(きざ)になり、片足だけ膝を立て、そのまま上へ引っ張られるようにまっすぐ膝を使って立ち上がるのが、理想です。
それが無理なら、壁や頑丈な机などにつかまり、ゆっくりと立ち上がります。
いずれにしても痛みが出ないよう、くれぐれも慎重にしてください。

7.膝の屈伸をする

立ちあがることができたら、上体や骨盤を立てたまま、膝の屈伸をします。
最初は、小さく、ゆっくり行います。
壁や頑丈な机につかまって行っても、かまいません。
目的は、少しでも筋肉を動かすことです。

8.そろそろと歩く

ある程度、膝の屈伸ができるようになったら、歩いてみましょう。
最初は、すり足でもかまいませんので、ゆっくりと歩きましょう。
不安なら、何かにつかまってもけっこうです。
何度も申し上げますが、目的は少しでも筋肉を動かすことです。
治癒を早めたいなら、安静にするより無理のない範囲で動くことです。
ただし、無理は禁物です。
痛みを感じた時点で、身体は再び可動域を狭めようとします。
だから、身体の声を聴きながらじっくりと取り組んでみてください。

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