マッサージに価格破壊

本誌「肩こり記者」がもみ歩き
60分2980円も!
マッサージに価格破壊
激安でスッキリ

マッサージ60分2980円也一一。
疲れた人たちの「いやしの場」マッサージ店にも、ついに価格破壊の波が押し寄せてきた。店舗は駅至近、時間はたっぷり。これまでの「常識」を打ち破ったリラクゼーションの現場を本誌「肩こり記者」がもみ歩いた。

 職場のプレッシャー、家庭内の不和、さらには地元のコミュニティーや親戚づきあい。日々の積もり積もった心労で、カッチカチに張り詰める肩こりは、「現代病」の一つといってもいいだろう。

 記者もそんな肩こりもちの一人。常々、重い肩に悩まされ、さらには片頭痛、そして全身倦怠感を覚えることも、しばしばだ。

 頼りになるのがマッサージだが、問題はそのお値段だった。安いとされているマッサージ店でも、相場は10分1千円。1時間ももんでもらえば、肩だけではなく財布も軽くなるのを感じざるを得なかった。

 そんな記者が東京・渋谷の街角で見かけた「60分2980円」という看板は、まさに饒倖だった。これまでの「定価」の半額以下。思わずしっぽを振って、店へ駆けだした。しかし同時に不安もよぎった。

 あまりに安すぎる値段。ちやんとした施術をしてくれるのか、ぼったくられはしまいか。安物買いの銭失いで、体中をおかしくされたのでは割に合わない。これまでも「激安」を謳う看板に何度だまされてきたことか。

 期待と不安を胸に、恐る恐るドアを押すと、意外にも開放感のあるスペースに、整然と並ぶベッド、いそいそと働く店員たちの姿が目に飛び込んできた。

 たしかに、「高級店」のおもむきはない。しかし清潔感のある内装同様、いたってシンプルな料金体系には安心感が漂う。サービスは手もみコースのみ、時間も60分のみとわかりやすい。

 初めての来店である旨を伝え、受付を済ませて、「お手並み拝見」と施術ベッドヘ。すると、受付をしてくれた妙齢の女性が、おもむろに指圧をスタートする。
「おいおい、受付がマッサージして大文夫かよ」と心配がまた頭をよぎるも、マッサージの腕は確かだった。

 硬く凝り固まった肩に、体重を乗せた指がめり込んでいく。決して軽くない記者の体重を支える腰、疲労の抜けないふくらはぎも、丁寧にもみほぐされ、こまめに押し加減を尋ねてくるなど、サービス精神もうれしい。

 気持ちよさにうとうとしながら、60分間を終えると、少し一肩の動きがスムーズになったような満足感があった。

 しかしなぜこんなに安いのか。
 
「キモ」は、いかに集客を図るか、またコストを削るかだと、格安チェーン「ほぐしの達人」を経営するオリエンタルシナジー取締役の春日雅博氏は言う。

 薄利多売な料金体系だけに、「いかに足を運んでもらつて、お客さんのこない隙間の時間をつくらないかが、重要です」(春日氏)

 「ほぐしの達人」は、首都圏を中心に31店舗を展開しているが、基本的には繁華街の中心や駅から見える範囲内に出店し、好アクセスでの回転率向上を狙う。各店舗に最低で8床設置されているベッドは、せっかく呼び込んだ顧客を、待ち時間で逃がさないためだ。

 また混雑状況に応じて、系列店で施術者を融通。当日以外の予約を受け付けないことで、キャンセルや客待ちによる「タイムロス」をなくしている。

 大きい店舗には約30人の施術者が在籍するが、前述のように受付を施術者が担当することでもコストを削つているほか、経験者のみを採用することで、社員教育にかかるコストを削減している。

 そんな経営努力のかいあつてか2009年5月の開業以来、閉店した店舗はゼロ。大型店では、月2千人以上の来客があり、600万円以上を売り上げているという。
もみほぐされた肩に気をよくしながらも、信頼しきれないのが、記者の性だ。

 「たまたま、『当たり』だつたんじゃないのか」

 そんな疑間を胸に、別店舗へ足を延ばす。向かったのは、東京を代表する「夜の街」六本木だ。
  
 「まさか六本木にそんな安い店はないだろう」そんな先入観はここでも、鮮やかに解きほぐされた。

 なんと六本木交差点の目の前に、「激安リラクゼーション」の看板が掲げられているではないか。看板とは対照的に、間口が狭く、若千薄暗い雑居ビルのエレベーターホールに少し戸惑うも、店に一歩足を踏み入れれば、予約待ちが出るほどの繁盛ぶり。30分ほどの入店待ちとなったが、ここも「当たり」だった。

 落ち着いた店舗の中で、間診票にコリの箇所を記入すると、肩を重点的に、じっくりもんでもらえた。

コスト削減成功
都心部にも出店

 繁華街のど真ん中という好立地も割安感を増しているが、この店もまた、独自の経営努力で激安を達成していた。

 土地柄から午前5時まで営業することで、深夜営業の飲食店から流れてくる顧客をキャッチ。一等地であるがゆえ家賃は高いが、2階以上に店を構えることでコストを削っている。

 「3階、4階のほうが、看板が遠くからでも見えるメリツトもある」と、六本木などで別のチェーン「ほぐりぇ」を展開するビジネスリンクの担当者は語る。

 さらに、もう一店、六本木で「はしご」入店すると、「肩、がちがちに凝ってますね」と驚かれる。記者も驚くが、最初の店でマッサージを受けたときよりも施術者の指が体に深く入ることで、すでに肩はほぐれつつあったんだと効果を実感する。

 もっとも、「激安」に警鐘を鳴らす声もある。全国鍼灸マッサージ師協会は、「本来マッサージには国家資格が必要。素人の可能性もある店で施術を受け、疾患が悪化することもある」と注意を促す。

 そんな声に対して、「ほぐしの達人」の春日氏の答えは明確だ。未熟な施術者を雇っている業者があることを認めた上で、「うちではあくまでリラクゼーションとして行っています。持病を悪化させるようなリスクのある施術は行っていません」。

 日頃、いろいろな「重荷」を担ぎ続けている現代入の双肩。その重荷を、激安店で少しほどいてみるのはいかが。  本誌・木村敦彦

2012.10.12