江戸時代の暮らし

一燈を提げて暗夜を行く

【江戸時代の暮らし】

友人である平田さんが執筆された「江戸時代の暮らし」という秀逸なコラム。書かれている内容に大いに感銘を受け、深く共感をしたので、ぜひ多くの方に読んでいただきたく、シェアさせていただく。

江戸時代は、一般的には1603〜1868年とされる。資源が少ないという必要性から生じた生活習慣や文化かも知れないが、それを豊かさや美しさ、機能性に昇華させたのは、日本人ならではの繊細な感性、知能の高さや手先の器用さのなせる業だったのではないかと推察する。そのごく一部は、現存する建築物や生活用品、工芸品や芸能などに見つけることができる。

当時、日本を訪れた諸外国の人たちが、自然と調和しながら暮らす循環型社会が完成しており、暮らしは質素であるが、一方で優れた文化が花開き、心豊かに、幸せに暮らす人々や平和な社会を見て、これぞ理想郷と驚嘆し、羨望や絶賛をしたという記録が多数残っているのも頷ける。

私たちが出生した昭和の時代は、わずかながらも当時の風習や生活の名残があった。例えば、祖父母は常に着物を着ていたし、父も帰宅後は着物に着替えていた。また専業主婦であった母は“ものを大切にする”ことを徹底し、折り込みチラシの裏面をメモ用紙にしたり、容器や包み紙を再利用したり、服を自作することが常であった。

しかし昭和の半ば頃から、戦後復興と高度経済成長という錦の御旗のもと、大量生産と大量消費が大前提の社会となり、古いものは捨て、常に新しいものを買い求めるのが美徳のようになった。それに伴い、自然破壊や環境汚染が進み、日本の優れた文化の多くは形骸化したり、後継者がいなくなり廃れてしまうようになった。

それと同じようなことが、私が関わる武術・武道の世界でも起こっている。江戸時代の武士階級の人たちは、帯刀はしていたものの、実際に使う(人を斬る)ことはほとんどなかったそうだ。それでもいざという時は使えるように、武士たちは命懸けの稽古に励み、心身を鍛え、練り上げ、磨き上げていたそうである。

鍛錬の結果として高い技術レベルに到達した人たちは、向き合っただけでお互いの実力を推し量り、戦わずして(刀を抜かずして)勝負を決めたということが実際にあったそうである。何気ない姿勢や立ち居振る舞いに鍛錬の成果が現れており、全身から発する雰囲気やオーラが全く違ったのではないかと推察する。

そのような武士の生き方から「武士道」と呼ばれる文化が育まれ、一般庶民にまで浸透し、当時の日本人の知的レベルと我が身を律する精神性の高さにつながったと伝えられている。そこに日本人が元来備える八百万の神を敬い、平和を愛し、利他を重んじる民族性が備わった日本国民を、支配階級の西欧人は羨望し、嫉妬し、憎悪すら感じたのではないだろうか。

それゆえ彼らは日本文化を破壊し、日本民族を愚劣化し、根絶やしにすべく、明治維新を起こし、産業を興し、日本を世界経済と戦争に巻き込み、先の大戦では世界で初めて原子爆弾を投下し、人体実験を行うという暴挙を働いたのではないだろうか。それはずっと継続的に行われている施策であり、この3年の世界的騒動でいよいよ彼らの悲願が達成される寸前……現在は、そんなところではないだろうか。

世界や社会は、どんなに頑張っても、なるようにしかならない。ガンジーが述べたように、私たちが行うことの大半は無駄であるが、それでも世界によって自分が変えられないように、私たち一人ひとりが実践行動を続ける以外に、未来へつながる道はない。その拠り所となるのは、本来の日本人らしさを見直し、取り戻すことであり、江戸時代の暮らしには、そのためのヒントがたくさんあるように思う。

ある学者が「文化とは土に向かうこと、文明とは土から離れること」と述べていたが、とても的確な表現だと思う。江戸時代は、文化と文明が高度にバランスした、理想的かつ持続可能な社会だったのではないだろうか。一方で、江戸時代は大きな戦いのない平和な時代でもあった。わずか数百年前に私たち日本人は、それを実現していたのである。私たちが目指すべき地平は、そこにあるのではないだろうか。

なお、平田さんの鋭い慧眼と洞察力、的確な分析と表現が光るコラム『一閃』は、ご自身が理想の生き方を求めて実践行動を続けられるからこその素晴らしい内容ばかりであり、いつも多くのことを教えられる。ぜひバックナンバーをお読みいただくことをお勧めする。また、近々平田さんを訪ね、久しぶりに一献傾けながらゆっくり語り合いたいものだと思っている。

平田 佳宏
第233回 江戸時代は人口に対して資源が圧倒的に不足していた。だからこそホンモノの循環社会が実現した。もちろん当時は資源が足りないという意識などなかっただろうけど。
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