否定しない、批判しない、非難しない

一燈を提げて暗夜を行く

【否定しない、批判しない、非難しない】
 
約20年前。ある本の一文が、私の心を強烈に捉えた。
 
「キーボードを叩いて参加するか、さもなくば“死”だ」
 
その本は、トム・ピータースの『経営破壊』。コンピューターネットワーク(当時はそのように書かれていた)時代の到来を、トムはそのように表現していた。
 
私は、心の奥底から突き上げるような衝動に駆られ、苦手なパソコンに取り組み始めた。大枚をはたいて、モデム付きのノートパソコンを購入した。
 
ニフティサーブというパソコン通信サービスに加入した(当時はインターネットは、まだまだ高嶺の花であった)。自宅の電話線を通じて、自分のパソコン画面に他人が書いた文字や文章が流れてきた時、「時代が変わる!」と身体中が痺れるような衝撃を受けた。似たような体験をした人は、少なくないと思う。
 
さて、インターネットの発祥は、軍事利用だと言われる。しかし、これはインターネットに限らない。現代におけるあらゆる技術や産業が、軍事由来や軍事目的であることは、みなさんよくご存知のことと思う。
 
今やインターネットは、<彼ら>が私たちを管理し、監視し、洗脳し、誘導操作するツールとして、素晴らしく有効に機能している。特にSNSは秀逸で、私たちが喜んで個人情報をさらし、嗜好や行動を暴露し、思想や哲学を公開するという、本当にうまく出来た仕組みだと思う。
 
つい先日も、“炎上”騒ぎがあったようだが、この手の対立と分断の仕掛けも、おそらくは<彼ら>が用意したものであろう。<彼ら>の仕掛けは着々と効を奏し、その罠に囚われる人たちは増える一方である。
 
本当によく出来ていると思うのは、罠に囚われている本人たちが、それに気付けないばかりか、正義を実行していると深く確信していることである。
 
同志とも言える大切な人たちとは、例外なくインターネットがご縁をつないでくれたのは事実だ。しかし、せっかくのご縁も、少し間違えると前述のような罠の温床になるので、大いに気を付けたいものだ。
 
その際のひとつの指針が、冒頭の一節、
 
「否定しない、批判しない、非難しない」
 
である。
 
正しいことを追究することは、とても大切だ。しかし、一人の者が絶対的に正しいということは、人間である以上、あり得ない。どんな教義だろうが教典だろうが、それがカタチをなして残っている以上、人間の意図や思惑が混在することは絶対に避けられないことに、私たちは気付くべきであろう。
 
自分と違う意見や価値観に遭遇すると、否定したり、批判したり、非難したくなるのが人の常だ。
 
しかし、これらの感情や行動は、自信の揺らぎであり、恐怖の顕れであると私は思う。もしくは、相手の中に自分と同質のものを見つけた時の動揺を隠すために、そのような行動に出るのではないかと思う。
 
少なくとも私は、そのように自戒している。ネットワーク上のコミュニケーションはもちろんのこと、現実の社会でも否定、批判、非難しないよう気を付けたいと思う。

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