先日、父が90歳の誕生日を迎えた。
誕生祝いに家族が集まり、父の大好物である寿司を食べに行った。
久しぶりに二人そろった孫の顔を見て、嬉しそうだった。
現在、施設に入居している父。
基本的には穏やかで、大人しい人なのだが、時々、予想外の行動を起こし、周囲を驚かせる。
認知症という言葉は、あまり使いたくない。
しかし、昨年と比較して、異常行動の傾向は強まり、頻度は高まりつつある。
施設を訪ねると、少しだけ、嬉しそうにしてくれる。
帰り際には、「また来るね」と言って、しっかりと父の手を握る。
父は「ありがとう」と言って、握り返して来る。
そして、私が長い廊下を曲がるまで、ずっと戸口で見送ってくれる。
いずれも、昨年まで、父が絶対にしなかったことである。
たった一年で、いろんなことが大きく変わってしまった。
きっかけは、5月の母の他界である。
これでいいのだろうか、もっとしてやれることがあるんじゃないのか…
さみしくはないか、何かして欲しいことはないか…
父のことを思うと、胸が痛み、時として涙があふれてくる。
しかし、私には私の人生があり、多くの時間が残っているわけではない。
板挟みになり、苦しみつつ、心も時間もなんとか折り合いをつけ、前へ進む。
人生とは本当に豊かなものだと、つくづく思いつつ。