生物の運動には、二通りの神経伝達経路がある。
錐体路系と錐体外路系だ。
錐体とは「延髄の前面の運動神経の束」であり、そこを通るのが錐体路系であり、通らないのが錐体外路系である。
ごく大雑把に申せば、意識と無意識である。
錐体外路系の方が古く、錐体路系を獲得したのは、生物進化の歴史で申せば、ごく最近のことのようだ。
ちなみに鳥類以下は、ほぼ錐体外路系のみで動いているという。
人間はこの両系統のバランスをとりながら運動しているのであるが、現代に生きる私たちは、錐体外路系の働きが衰退していると思われる。
この地球上に生息する生物として、極めて不自然な生活をしているがゆえの必然の結果であろう。
特に日本においては、生きづらさや息苦しさを感じる人間が膨大に存在するが、ここに遠因があると思われる。
最近感じることで申せば、命を粗末にする政治家や事業家、そしてそれを是認し、さらには支持さえする人間が多く存在するが、錐体外路系の極度な不活性ゆえのことと想像される。
命を守る、つなぐという生物としての第一優先事項をすっかり忘れてしまっているのだ。
古武術の稽古や整体は、錐体外路系を刺激し、活性化させる効果がたいへん大きいと感じている。
錐体外路系を使わないと、成り立たない営みだからだ。
手前味噌になるが、整体においては、被術者はもちろんのこと、施術者自身の錐体外路系をも活性させる。
だから、真面目に整体修行に励む者は、生物としての本来のあり方を思い出し、自分の本当の声を聴くようになり、自分らしい生き方へと歩み出すのではないかと考えている。