これから私たちに関わる方々(整体院でセッションを受ける方、整体塾で学ばれる方、その他ご一緒させていただく方)に対して、私たちの整体に対する考え方や取り組み方を整理して表明しておきたいと思い、執筆いたしました。かなりの長文で恐縮ですが、お時間のある時にお読みいただければ幸いです。
あらゆる疾患の根本原因
古代ギリシアの医者ヒポクラテスは「人は自然から遠ざかるほど、病気に近づく」と述べたそうですが、まるで現代社会を予見したような箴言です。経験上、現代を生きる多くの人が悩み、苦しんでいる、慢性疾患(成人病や心臓病、自律神経失調症など)、難治性疾患(癌やリウマチ、線維筋痛症など)、精神疾患(うつやパニック障害、統合失調症など)の大半は、自然からの乖離が最大の根本原因だと考えています。つまり、それらの疾患から逃れ、健康と癒しを得るためには、できる限り、心身を自然な状態へ還せばよいのです。
特に日本という国は、四季が明確で、四方を海に囲まれ、起伏の多い土地に、森や林や河川も多く、豊かな自然に恵まれています。それゆえ、つい150年ほど前まで、つまり4〜5世代以前の日本人は、自然と共生し、調和しながら暮らしていました。また、遠い祖先である古代日本人は、争いのない平和な社会を築き、1万年以上にわたり営んでいたと伝えられています。そのような歴史的背景をもつ日本人にとって、現代における都市のような人工的な環境の中で、子供の頃から過酷な競争を強いられ、制限や束縛に満ちた社会システムの中で生きることは、あまりに本来のあり方(=心身の自然な状態)からかけ離れています。大勢の人が、深刻な疾患に苦しむのは当然の結果とも言えるでしょう。
現代医療と代替療法
一方で、現代日本に存在する医療機関(病院、クリニック)の大半は、西洋医学を基盤にした現代医療を採用しています。現代医療は対症療法であり、怪我の治療や救急救命、疫病の予防や治療には抜群の威力を発揮しますが、現代人の多くが悩み、苦しむ慢性疾患、難治性疾患、精神疾患に対してはほぼ無力です。にも関わらず、他に頼るすべがないためか、多くの人が医療機関や医師に依存し続けています。その結果、日本の医療費は年々高騰を続け、今や年間42兆円にものぼります。
それと比例するがごとく、病人や寝たきりのお年寄りの数は増え続ける一方です。つまり、医療は病人を量産する“巨大産業”として隆盛を極めて来たのです。しかし、今、その矛盾や異常さに気づく人が少しずつ増えてきています。それに伴い、現代医療を盲信する風潮にも陰りが見えて参りました。そのような状況下、昭和の時代に民間療法として細々と生き延びてきた整体は、平成の時代には医療を補完する「代替療法」の一つとして大いに脚光を浴びるようになりました。しかし、代替療法といえども、治療という概念や範囲を脱しない限りは、依存を招くという点で医療と大差ありません。
新たな整体の役割
令和という新しい時代に入り、私たちは大きな転機を迎えようとしています。経済的規模の拡大と効率化を絶対善とし、大量消費と大量生産を前提として発展してきた現代文明の延長に、明るい未来がないことに気付く人が増えつつあります。そのような中、健康や幸せに対する認識や価値観も多様化しつつあり、「自分らしさ」や「人間らしい生き方」を強く求める人が増えているのではないでしょうか。整体は、そのようなニーズに応える手段として、代替療法や治療術ではなく、「教育」としての役割を担いつつあると感じています。
また日本は、前例のない超高齢社会に突入しています。私たちは、先の見えない極めて困難で不確かな時代を迎えつつあるのです。これまで考えもしなかったような社会状況になることが、容易に想像されます。いついかなる時でも、力強く生き抜いていく上で唯一頼りになるのは、自分自身です。新しい時代を生きるためには、自分の中に確固たる基盤と軸を築き、希望を見い出すことが必要不可欠です。それは、心身が本来備える無限とも言える可能性と力に目覚めることであり、その手がかりを授けるのが、教育としての新しい整体のあり方であり、重要な役割ではないかと考えている次第です。