亡き師匠は、時々、私たち弟子たちに対し「今、幸せですか?」という問いを投げかけてきました。即答出来る者は、ほとんどいません。多くの者は「うーん…」としばらく考えて、「決して不幸ではないけど、幸せとも言えないかなぁ…」と答えるのがやっと。何を隠そう私も同じであり、師匠のことを「困ったこと聞く面倒なオッサンや」と思っていました(師匠、ごめんなさい)。
師匠がこの世を去って数年後、ある日、ある出来事がきっかけで、私は突然「今、ここに幸せがある」ことに気付きました。その気付き以降、人生がそれまでとは全く異なるものになりました。そして、師匠が本当に伝えたかったことはこれではないかと思い至り、私も自分の整体塾門下生たちに、同じ問いかけをするようになりました。「今、幸せですか?」と…
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一昨日、整体塾門下生である山崎 寿子先生が、一年間の「整体起業講座」の全過程を修了されました。修了証書を授与した後に、一年間の感想などを述べてもらうのが通例なのですが、超真面目な彼女は、当日緊張して十分に話せなくなることを懸念し、私たちに伝えたいことを一所懸命に考え、それを手紙にしたためて、準備してくれました。
昨年、彼女が整体の学びを開始するにあたってご主人に相談したところ、強く反対されたそうです。それでも彼女は「やりたい」という心の声を抑え込むことはせず、自分を信じて、第一歩を踏み出しました。そんな入門したての彼女に対し、私は「今、幸せですか?」と尋ねたそうです。彼女はそんなこと考えたこともなかったので、答えに窮したそうです。
彼女にとって整体の学びは、初めて耳にすることや経験することばかり。理解できず、迷い、悩むことも多かったと思います。ご主人の反対や無関心に、心が折れそうになったこともあったでしょう。それでも、大切なご主人に理解して欲しいという熱意が通じ、修了を迎える日は同伴で道場へ来られ、ご主人から「お世話になりました」とご挨拶いただきました。男気のある、素晴らしいご主人だと拝察します。
さて、そんな彼女が、修了にあたって綴った文章。私は、彼女がそれを読み上げる姿に大きく感動し、あふれる涙を抑えることができませんでした。以下、私の涙腺が崩壊した一節をご紹介します(彼女からは恥ずかしいので他の人には話さないでくださいと言われていましたが、あまりに感動したので…ごめんなさい…)
「娘として、妻として、母として…と、ずっと何か自分に役割を与えてふるまい、周りの環境に流されて生きてきた結果、本当の自分を見失っていました。初めの頃に先生から『今、幸せですか?』と急に質問された時、考えたこともなかったので、全く無になり、何も浮かびませんでした。自分が幸せを感じているかどうかもわからずに、生きていたのです。そこから一年間学び、たくさんの気付きを得たことで、少しずつですが自分の心に耳を傾けたり、感情を素直に感じることが出来るようになってきました。今、私は幸せです。そう思えるようになったのも、この塾で学んだおかげです」
彼女がこの一年、本気で自分に向き合い、自分と対話し、自分の努力で自分自身を愛で満たし始めたことが、彼女の姿から伝わってきました。愛とは「尊重し、信頼すること」であり、目には見えないが、確かに存在する大きなエネルギーです。しかも、あふれさせることでしか、本当の意味では他者に伝えることができないという性質をもっているエネルギーのようです。
寿子先生は、4人のお子さまを出産し、育てておられます。誰にでも出来ることではない偉業だと思います。しかも、その過程で、自分自身が大きく体調を崩し、とても苦しい時期を過ごされました。その時期に私の整体院を知り、行ってみたいと思いつつ、諸事情により足を運ぶことができなかった…そして昨年、違ったカタチでご縁をいただきました。
50〜70代は、人生最高の時期です。娘時代のこと、結婚、出産、子育て、そして体調不良に悩まされたこと、ご近所付き合い、ご主人とのパートナーシップなど、これまでの経験を存分に生かし、自分らしく、自立して、自由に生きる。それにより、他者に尽くし、社会に貢献できる、自分にしかできない最高の仕事を創造すること。それが、整体で起業するということです。
寿子先生、一年間、本当によく頑張りました。その姿は、私たちに大きな勇気と希望を与えてくれました。ありがとうございました。貴女の今後のますますの成長と活躍を心から願うと共に、同じ地平を目指す仲間として、学び合い、支え合っていければと思います。特に、すぐそばにいる門下生として、とても頼りにしております。これからなおいっそう、よろしくお願いいたします。