開店7周年を迎えて

仕事について

本日11月23日、私の整体院「心身楽々堂」は開店7周年を迎えた。

7年前、47歳で脱サラし、未知の業界で未経験の仕事に携わり、しかもいきなりの独立自営。
整体師は10年経験を積んでやっと一人前と言われるのに、無謀も甚だしい。

さらに9割以上の者が3年以内に廃業し、残る1割もその大半が年収300万円以下と言われる厳しい現実の中、私のような未熟者が7年も営業を継続し、売り上げを伸ばし、人並みの収入を得られるのは奇跡に近い。
これは、ひとえにみなさまとのご縁や温かいご支援の賜物であると感謝にたえない想いである。

この看板は、7年前に掲げた。
簡単に下せないように、わざわざ頑丈なものをこしらえ、取り付けた。

たかが看板、されど看板。
私には、「看板」に強い思い入れがある。

15年ほど前になろうか、サラリーマンとしてある企業に勤務していた時のことである。
当時の上司に呼び出され、言われた言葉が深く胸に突き刺さった。

「西田さん、あなたの看板はいったい何なの?あなたは何をする人なの?何ができるの?」

その5年ほど前に、私は大きな組織異動を経験していた。
大企業の事業部をまたがる異動は、同じ会社とはいえ、ほとんど転職に近かった。

30代半ばで、新入社員と同じスタート地点。
とはいえ、当たり前のことながら、成果は年齢なりに求められる。

強いプレッシャーの中、私は自分の居場所を探した。
上司や同僚たちも、協力や応援してくれた。

しかし、どう頑張っても私は自分の居場所を見つけることができなかった。
そんな折に向けられた上司からの詰問に、私は答えられなかった。

「看板を持たない“ぶら下がり社員”」

それが、当時の自己イメージであった。
つまり、能力もないくせに、一人前の給料をもらう“お荷物社員”ということだ。

それを、上司にズバリ指摘されたのだ。
何とかしろと言われたのだ(もちろん意地悪ではなく、私のことを思ってのことだ)。
心臓をグサリと一突きされたような衝撃であった。

もちろん、真面目に働いていた。
現状打破も、試みた。

しかし、もがけばもがくほど空回りし、泥沼にはまる。
そんな毎日が、本当に苦しかった。

かといって、会社を辞める勇気もなかった。
当時もらっていた給料が、決して安くなかったからだ。

転職しようにも、特別なスキルを持たない中年男を受け入れてくれる企業などない。
万が一あっても、収入が大幅に落ちるのは確実だ。
新築したばかりの自宅の住宅ローン、育ち盛りの息子二人を育てていくための生活費や教育費をまかなえる収入を得る可能性は、限りなくゼロに近かった。

苦しいけど、現状維持しかない。
八方ふさがりで、将来に夢も希望も持てない。
ついには、うつになった。

そんな最中に、いまは亡き整体の師匠にご縁をいただいた。
師は、理想と現実を高いレベルで両立させる道があることを教えてくれた。

探し求めていた自分の道はここにあると直感した。
魂が、そう訴えていた。
一緒にこの道を歩もうという師の言葉に感動し、号泣した夜のことは決して忘れない。

それが、2008年1月末のことだ。
以来、無我夢中で師のもとで整体を学んだ。

そして学び始めて1年もたたない2008年11月23日、現在の店舗を開店した。

ちっぽけな店ながら、自分の看板を揚々と掲げた。
やっと俺も看板が持てた!
この看板は、新しい人生を歩む決意と覚悟と希望の象徴だった。

しかし、高揚した心はすぐに打ち砕かれた。
厳しい現実に行く手を遮られ、自分の甘さ、無知さ、無謀さを思い知ったのだ。
落胆、挫折、絶望の日々を過ごした。

当時、翌月の予約を入れてくださる数少ないお客さまに対し、

「すみません、来月は、もしかしたら営業していないかもしれません・・・」

何回、心の中で、そうつぶやいたかわからない。
営業終了後の真っ暗な整体院で、情けなくて、声をあげて泣いたことも何度かある。

でも、この仕事をやめようと思ったことは、ただの一度もない。
掲げた看板、何があっても下すまい。
看板を見上げては、当初の決意と覚悟を思い出し、頑張ろうと歯を食いしばった。

どん底に落ちても、地べたを這いつくばっても、私はあきらめなかった。
あきらめなければ、必ず道は開けるものだ。
そして数々の苦労や困難は、私を鍛え、育てるためのありがたい糧であると気付いた。

当時ピカピカだった看板は風雨にさらされ、汚れ、ニスが剥げ、ひび割れ、苔が生え、朽ちてきた。
きっと現在の私自身も、そんな感じなのだろう。
この看板は、共に頑張ってきた同志のようで、とても愛しく思う。

社会や組織において、自分の居場所がない。
自分の看板が掲げられない。

そのような、かつての私のような悩みで苦しむ人は、決して少なくないと思う。
とても生き辛い世の中だからだ。

でも、安心して欲しい。
答えは、必ず自分の中にある。
今は見つからなくても、時期が来れば必ず見つかる。
それを確信して欲しい。

生まれて来た意味。
生かされている意味。

それに気付ければ、人は幸せになれるのだ。
どんな状況でも、どんな瞬間でも、喜びに満ちて生きることができるのだ。
希望をもって、輝き続けることができるのだ。

そして、そのお手伝いをするのが、私たち整体師の役割だと考えている。

やっと7年、まだまだこれからだ。
この道へ誘い、導き続けてくださる亡き恩師、同じ地平を目指して歩んでくれるパートナーや仲間たち、応援してくださるお客さまや地域の人たちとともに、さらなる挑戦と精進を続けたいと思う。

いつも本当にありがとうございます。
そしてこれからも、何とぞよろしくお願い申し上げます。

整体読本「掌ひとつの革命」
無料でダウンロード
“心を使って人間という生命体を整える”、癒しの人間学「心整体法」の入門書。整体に興味がある方はもちろんのこと、生き方や働き方に迷いや悩みがある方に、ぜひお読みいただきたい整体読本です。もちろん、何をやっても治らない、頭痛、めまい、動悸、過呼吸、不眠、慢性疲労、自律神経失調症、起立性調節障害、不安障害、パニック発作、うつなど、原因不明の不快症状や心の病で苦しんでおり、わらにもすがりたい気持ちで、改善の道を探しておられる方にも、きっとお役に立てる内容だと思います。
仕事について社会について
シェアする
西田 聡をフォローする
掌ひとつの革命
タイトルとURLをコピーしました